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枝葉の無い花

枝葉の無い花

<夢想人>
今日であなたともお別れです。
夢想郷はついに最終段階に突入します。
これ以上あなたをこの地に導くことは私の本望ではありません。
最後にこのお花を受け取ってください。

<私>
このお花は…

<夢想人>
このお花は、
我々夢想人の世界の現実であると共に、あなたの世界の現実でもあるのです。
あなたには現実を見つめて生きていって欲しいから、常日頃に自分を戒めてもらいたいから、だから、この夢想郷の最後の花を受け取っていただいたのです。

今はこのお花の意味がわからないかもしれませんが、いずれわかるときが来るでしょう。
そのときには手遅れかもしれませんが、しかし、このお花を見つめて生きていくことは、ほんの些細な祈りにすらもならないかもしれませんが、それは無意味なことではないはずです。

今の世の中は混沌としているかもしれませんが、本来自然とはそういうものなのです。
我々夢想人も、
「安定を求めては、かえってそのために自らが不安定になってしまう」という、
そのような状況を幾度と無く繰り返してきました。

「自然は、人間の考えとは別のところで独立した存在」であるという事実から目をそらし、仕舞いにはみずからを自然と切り離してしまった夢想人。

しかしあなた方にはそうならないでもらいたいのです。

「安定を求めるのではなく、不安定な世の中かもしれないけれども<ありのままの自分>をそこに置く事。最初はそのような教育を受けていないあなた方には不慣れなことかもしれないけれども、長い目で見ればそれがいつかきっと花開くこともあるはずです。そして無意識のうちに自らが安定するかもしれない」

「私」をなくしつつ「私」を確立するということ。

「今のように自らの安定だけを求めて、いざ自身が安定したら他者をさげすむ人類に、未来があると思いますか」

<私>
…。
そういえば最近、夢想健志君を見かけませんがいま彼はどこにいるのですか。

<夢想人>
「ああ、彼ね。彼はこんな不浄な世界にいたら気が狂いそうだとか何とかいいながら、なんだか引きこもり状態にあるみたいよ…。自分では隠遁生活とか言って気取ってはいるけど…(笑)」

<私>
でも…。
彼はこのまま夢想郷にいても大丈夫なのですか。

<夢想人>
「ええ、大丈夫よ。彼は元々この世界の住人ではないから、私が責任を持って帰らせますからね」

「彼は少し生きる力を失っていたみたいね。でも、もう大丈夫みたいだから。本当はあなたに一緒に連れて行ってもらいたいのだけれども、それは駄目ね、帰り道は一本だもの…でも大丈夫どうにかなるでしょう」

<私>
…。
「いろいろとお世話になりました、そして有難う御座います」
これからは、
夢想郷で見たものを、誰も見向きはしないかもしれないけれども、地上の世界でまとめて生きたいと思います。

<夢想人>
「みんな心に傷をもって生きている」

「その重荷を誰かに負担してもらうことで、自分自身は軽くなるのかもしれないけれども、それを負担してくれた人は荷物を新たに背負うことになる。」
しかし、
「負担してもらう代わりに、自らも相手の負担を背負うことができたら、それはそれでまた違うものになるのではないでしょうか」



随分長いお話になってしまったかもしれませんが、
夢想人も、
地上人も、
人類として何が最優先かを考えて、
そして、
生きていくことができるのならば…

もう少し長い間、夢を見続けることができるのではないでしょうか。

その夢が、
今回のお花のようにならないことを祈りつつ、お別れにいたしましょう…

※July 31, 2006 より

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